履行不能(りこうふのう)とは、契約などの成立後に、正当な理由なく債務の履行(義務の実行)が物理的・社会通念上に不可能となることを指します(債務不履行の一種)。
例えば、「売買契約を結んだ後に、目的物である建物が火災で全焼して引き渡せなくなった」といった状態がこれにあたります。
1. 履行不能の成立要件と「不能」の判断基準
民法上、履行不能が成立するためには以下の条件を満たす必要があります。
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契約その他の債務が発生した後に履行が不可能になったこと
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社会通念に照らして不可能であること(単に物理的に不可能なだけでなく、取引上の常識や契約の目的に照らして不可能と認められるかどうかも含めて判断されます)
原始的不能と後発的不能(民法改正のポイント)
2. 帰責性(理由)による効果・法的結果の違い
債務者(義務を負う側)に「落ち度(帰責事由)」があるかないかによって、相手方(債権者)が取れる法的手段が大きく異なります。
【履行不能の発生】
├── 債務者に落ち度がある場合(故意・過失・火の不始末など)
│ ├── 損害賠償請求(履行利益の賠償)
│ └── 催告なしでの「無催告解除」
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└── 債務者に落ち度がない場合(不可抗力:地震・津波などの天災、第三者の放火など)
└── 危険負担(反対給付の履行拒絶権):買主は代金の支払いを拒絶できる
| 区分 | 債務者に帰責性(落ち度)がある場合 | 債務者に帰責性がない場合(不可抗力など) |
| 具体例 | 売主のタバコの火の不始末で建物が全焼した | 地震による津波で建物が倒壊・流出した |
| 契約解除 | 催告なしで直ちに契約解除が可能(催告しても意味がないため) | 直ちに契約解除が可能 |
| 損害賠償 | 請求できる(得られるはずだった利益相当額など) | 請求できない |
| 代金の支払い | 代金支払いは不要(契約解除による) | 支払いを拒絶できる(危険負担:反対給付の履行拒絶権) |
3. 他の債務不履行(履行遅滞・不完全履行)との決定的な違い
債務不履行には「履行遅滞」「履行不能」「不完全履行」の3つがあります。
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履行遅滞: 期日を過ぎても履行していないが、後から履行すること自体は可能な状態(例:代金の未払い)。
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履行不能: 後から履行することが完全に不可能な状態(例:1点ものの骨董品が粉砕した)。
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不完全履行: 一応履行されたものの、内容に不備や欠陥がある状態(例:新車を納車されたが傷がついていた)。
