履行遅滞

履行遅滞(りこうちたい)とは、債務者(義務を負う人)が、正当な理由がないのに契約などの履行期(期日)を過ぎても義務を果たさないこと(債務不履行の一種)を指します。

例えば、「期日を過ぎても代金を支払わない(金銭債務)」「契約した日までに商品を納品しない(特定物・種類債務)」といった状態がこれにあたります。

1. 履行遅滞が成立する4つの要件

民法上、履行遅滞として法的な責任を問うためには、以下の4つの条件がすべて揃う必要があります。

  1. 履行期が到来していること(返済日や納品期日を過ぎている)

  2. 履行が可能であること(履行が物理的・社会通念上に不可能な場合は「履行不能」になります)

  3. 正当な事由(理由)がないこと(同時履行の抗弁権などがないこと)

  4. 債務者に責めに帰すべき事由(帰責性)があること(債務者の故意や過失など)

    ※ただし、金銭債務(お金の支払い)については、天災など不可抗力であっても帰責性の有無を問わず、常に履行遅滞の責任を負わされます(民法第419条3項)。

2. 履行期(期日)の種類と遅滞の発生タイミング

契約の期日の定め方によって、いつから履行遅滞になるかが異なります。

履行期のタイプ 具体例 履行遅滞になるタイミング
確定期限 「2026年9月30日までに支払う」 その期限が到来した時点(10月1日午前0時)
不確定期限 「父が亡くなったら支払う」 期限が到来したことを債務者が知った時点
期限の定めなし 「借りたお金をいつか返す」 債権者から履行の請求(督促)を受けた時点
不法行為の損害賠償 交通事故などの損害賠償 不法行為が発生した時点(事故当日)

3. 履行遅滞になるとどうなるか?(債権者が取れる効果・法的手段)

債務者が履行遅滞に陥った場合、債権者は以下の法的請求や措置をとることができます。

  • 履行の強制: 裁判などを通じて、強制的に義務を実行させる。

  • 遅延損害金(遅延利息)の請求: 金銭債務の場合、約定金利または法定利率(民法で定められた利率)に基づき、期日から遅れた日数分の遅延損害金を請求できる。

  • 損害賠償請求: 遅延によって生じた直接的な損害(得られるはずだった利益等)の賠償を請求できる。

  • 契約解除: 相当の期間を定めて「期日までに履行してください」と催告(支払いや納品の督促)をし、それでも履行されない場合は契約を解除できる(催告解除)。

4. 他の「債務不履行」との違い

債務不履行(契約通りに履行されないこと)には、履行遅滞のほかに以下のパターンがあります。

  • 履行不能: 火災で売買対象の建物が全焼したなど、後から義務の履行が不可能な状態になること。

  • 不完全履行: 納品されたが品物に欠陥があったなど、一応履行されたものの内容が不完全なこと。

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